F1といえば言うまでも無く、自動車レースの世界最高峰であり最高速度時速300キロ近い速さでの戦いが繰り広げる世界的スポーツですよね。実は私モータースポーツに少し関係する仕事もしていて、F1は縁があるのです。
(写真F-1 Gate より)
その関係もあるのですが、いずれにせよ年中行事として毎年シンガポールF1グランプリに参加しています。
F1シンガポールグランプリは、モータースポーツに興味が無い人でも楽しめるイベントであり、グローバルに活躍するビジネスパーソンにとってもヒントがたくさん得られる素晴らしい機会でもあります。日本人ビジネスパーソンのアナタにも是非お薦めしたいイベントです。今回は2018年のグランプリの様子をご紹介します!
F1シンガポールグランプリとは?
(写真:Formula-1 Dataより)
- 自動車レースの最高峰と言われる世界的な人気スポーツで、ヨーロッパではサッカーに次ぐ人気とも言われます。
- 2018年は、ご存知日本の鈴鹿サーキットを含む世界中の全21戦のグランプリによって年間チャンピオンが決定されます。
- シンガポールグランプリは全21戦のうち15戦目でありチャンピオン決定までの方向性を決める重要なレースの位置づけです。
- シンガポールは2008年からスタートし10周年を迎えました。
ここがすごい!F1シンガポールグランプリの魅力
・特徴はF1歴史上初のナイターレースということ!
・もうひとつの特徴は、自動車レースのみに限らず音楽フェスでもあるということ!
・さらにシンガポール中心部の一般公道をレースの期間だけ封鎖し、サーキットを作り上げる「市街地コース」であり、シンガポールという国を挙げての年間ビッグイベントなのです。
つまりF1グランプリという既存のフォーマットに乘りながら、その枠にとらわれない全く新しい発想の世界的お祭りなのです!
少し詳しく紹介しましょう。
ナイトレースというF1の新しい魅力の創造
F1のレースマシンは、ニューヨークの現代美術館に展示されているほど「走る芸術作品」と言われる造形美があります。最高の速さを追求した結果のクルマのフォルムであるということです。世界中のスポーツファンを魅了する理由はこの美しい芸術品同士が最高速を競うことになります。
この芸術品たちを夜の街でライトアップされた状態で鑑賞することができるなんて…半世紀以上のF1の歴史の中で初の試みだったのです。
私も10年前シンガポールグランプリが「夜のレース」と聞いたときは興奮しました。
元々は「暑さ対策」とも言われていました。常夏の国シンガポールは日中は年中30度を超える気温となりレースマシンや選手のコンディションへの影響が大きいとされていたようです。そこで、気温がある程度下がる夜間のレースとなったということなのですが、マイナスをプラスに転換させるこの発想は、後述しますがシンガポールの国家戦略自体にも見られるのです。
誰もが楽しめる音楽フェス!
10年前シンガポールグランプリの企画段階当時、東南アジアにおけるF1人気はそこまででもなかったような気がします。当時シンガポールでよく聞いた意見は、やや冷ややかなものが多かった気がします。
そこで、モータースポーツファンだけでなく、多くの人が楽しめる「音楽フェス」となったわけです。そのメンツも豪華で…過去10年間で出演したアーチストは
マライヤ・キャリー、ジェニファー・ロペス、ジャスティン・ビーバー、ケイティ・ペリー、リアーナ、Linkin Park、Bon Jovi、Maroon5, BIGBANGなどなど…
世界的なビッグアーチストばかり!
そして今年は…
(この立ち姿…わかる人はすぐわかりますよね)
元OASISのリアム・ギャラガー!他にも Dua Lipa や The Killers そして日本からの初登場 SEKAI NO OWARI も出演して大いに盛り上がっていましたよ!
今回セカオワのライブにはシンガポール行きのフライトでお世話になった某航空会社のCAさんもノリノリで楽しまれてましたが…F1は全く詳しくなくセカオワだけ観に来たのだそうで…。
やはりそうなんですよね~F1ファンじゃなくても足を運びたくなる楽しいフェスティバルなのです!
国を挙げての国家的プロジェクト
前述のとおりF1シンガポールグランプリは、市街地の一部をグランプリの期間だけ封鎖し特別サーキットを作り、そこで行われます。オフィス街や一般の国民たちの生活空間の一部を巨大イベントのために封鎖し提供するのです。国民の理解が無ければ到底実現しません。
国を挙げてのイベントに踏み切った一番の背景は「経済効果」と言われています。世界的イベントのため、あらゆる国からF1ファンがシンガポールにやってきます。グランプリの期間、ホテルの部屋代は高騰し、交通渋滞を引き起こします。それでも国が重要イベントと位置付けているのは、15万人を吸収し100億円以上の経済効果をもたらすから…ということになります。
2018年のメインスポンサー「シンガポール航空」をはじめシンガポールの大手企業がしっかりサポートするのもうなづけます。
(シンガポールの大手企業もこぞってスポンサーに)
シンガポールグランプリの成功から学ぶべき点
以上ご紹介してきましたようにF1シンガポールグランプリは今や最も成功しているアジア初の巨大イベントとなっており、その背景にはこんな背景があるとみています。
日本人ビジネスパーソンであるアナタにも是非参加していただきたいイベントです。モータースポーツファンであってもなくてもです。
そしてそんな日本人ビジネスパーソンの我々が学ぶ点も沢山あるのです。
是非アナタ自身で体験し、学びや気づきを得て頂きたいのですが、私自身が10年間シンガポールグランプリに通って得た気づきの一部を以下にシェアします。?
1.弱みではなく強みにフォーカス
先にも触れましたがシンガポールでF1グランプリが成功する余地は大きくありませんでした。それどころか開催に適した環境ですら無いと言われていたのです。
当時言われていたのが…モータースポーツの歴史や文化が無い、レースを開催した実績が無い、気候が適していない、巨大サーキット建設のための土地が無い
アナタの会社の会議のようですね…できない理由が沢山並びます(笑)
一見実現は非現実的だと言われながらも「自分たちにあるもの」を戦略的に打ち出したのです。国家として経済的に成功した実績、英語が公用語でありグローバルにオープンであること、「土地が無い」のではなくコンパクトな国土を反対に生かした市街地サーキットや、夜の気候をむしろ活かしたナイターレースの発想!
マイナスを全てプラスに帰る発想の転換で見事に実現させました!
2.既存の枠に囚われないアイデアで勝負
F1ファンという一部の限られた人たちに向けたイベントに留めず、もっともっと多くの人が世界中から集まるイベントを作り上げたこと自体も素晴らしいと思います。
F1自体もちろん世界的なビッグ・コンテンツです。世界中同じルールで20戦するレースですからもちろんフォーマットは厳しいです。標準の型がしっかり決められていますが、多くの人を引き付けるコンテンツでもあるのです。
それでもその既存コンテンツの魅力にだけ頼らず、もっともっとアイデアを広げたのです。
実は東南アジアでは隣のマレーシアのほうがF1の歴史は早かったのですが、10年の契約が終了した後その契約期間が更新されることはありませんでした。潤沢な土地に巨大サーキットを建設し、鳴り物入りで呼び寄せたコンテンツのその魅力のみに頼ってしまった感は正直ありました…。
3.10年かけてセルフ・ブランディング
10年間の開催により、今やシンガポールグランプリはF1の名物レースになりました。
同じアジアの名物レースと言えばもちろん日本の鈴鹿サーキットのF1日本グランプリです。30年の歴史があり、世界中のモータースポーツファンが憧れる存在感があると言われています。鈴鹿は素晴らしいのですが、観客動員数等イベントの商業性としては10年の歴史しかないシンガポールに追い抜かれているとも言えます。
定量評価だけでなく、F1ドライバーやチーム関係者も称賛する存在になっていますし、音楽フェスとしても世界中のビッグアーチスト達が「ステージに立ちたい」と憧れる舞台にまでなっていると言います。実際に2018年出演した日本の SEKAI NO OWARI も「ここで演奏できて光栄」とコメントしていました。
開催当時は何のイメージもなかったのに、10年間でここまで見事にブランドイメージを確立したのです。しかもそれに向けて当時から戦略を練っていました。
ビジネスでもよく「10年後のイメージがどこまで明確かで、戦略や日々の行動さえ変わる」と言われますが、シンガポールグランプリはそれを体現しているのです。
最後に…さすがシンガポールだなと思うのですが、イベントの運営自体が「グローバル・スタンダード」です。全て英語で運営され、地元シンガポールや世界中の人たちが何の不住も無くレースとフェスを楽しめる仕組みになっています。10年前の第1回目のグランプリの時は少々ぎこちなかった現場スタッフの運営も、もはやスムーズです。
日本の鈴鹿は「サーキットやレースは素晴らしいが外国人客には少々不親切」とは、過去に鈴鹿日本グランプリを体験した外国人の友人の声です。
さあ、今週末はいよいよ鈴鹿サーキットのF1グランプリですね!私も1年ぶりの現場におりますが、日本の歴史と伝統をよりグローバルに展開できる場所としての鈴鹿の進化を見て来たいと思います。楽しみ!